「俺も、悠馬に先帰っててもらうほどじゃなかった」


なんとなく、流れでもう桜が散ってしまった並木通りを2人で歩く。


「そういえば、羅崎乃亜って知ってる?」


唐突に望が言った。


「誰?」


そう聞いておきながら、なんとなくイヤな予感がした。


「3組なんだけどさ、入学式の日、覚えてる?ほら、悠馬に話しかけてた」


「あっ……」


忘れていたイヤな記憶が蘇る。


大きい瞳に慣れた様子の上目遣い、そして妹っぽさを感じさせる、甘え方。


「それで‥‥、その子がどうかしたの?」


「悠馬のこと、好きっぽいんだ」


ひゅうっと、風が私たちの間を通り抜けた。