やだ、なんで。


なんで勘違いしてるの。


「違う、勘違いだよ」


「じゃあ、なんで抱き合ってたんだよ」


あれを、ゆうに見られてた……。


なんで、周りをちゃんと見なかったんだろう。


見えてたっておかしくない。


「ちがっ……」


「違うわけないでしょ。俺は、距離を置くから。じゃあね、成美さん」


否定は、ゆうによってかき消された。


「……ゆう、待って」


私の弱々しい声は、ゆうには届かなかった。


最後、『成美さん』って。


確か、『なる』って呼ばれる前はそう呼ばれてたな。


本気で、距離を置く気なんだ。


それに、あんなに悲しそうなゆうを私は見たことない。


あんなに荒い言葉を私に向けるゆうも見たことない。