特に料理が得意だとかのオプションは自分にはなくって、その準備は文句を言いながらもほぼ朔夜さんがしてくれた。
彼の部屋はとても殺風景だった。部屋の家具やカーテンはモノクロで統一されてほぼ色がない。テレビさえもないから音もない。
だからこそその中で彼のグリーンがかった瞳が異質で、映えて見えた。
「料理出来ないとかないわー…女のくせにないわー…」
「昔から作ってくれる人も居なかったし自分でやってたんですけど、センスがないんでしょうね…これは」
「殆ど俺が用意する羽目になったじゃん。女と一緒に居て俺が料理するとか今までなかったんですけど」
嫌味を言いながらもテキパキと準備をしてくれた。やっぱり朔夜さんは面倒見の良い人だと思う。
二人で話をしながら用意をしていると、リビングの窓から見えた空は真っ暗になっていた。 真っ黒な世界を真っ白な雪が覆いつくしていく。
鍋の用意が終わって、朔夜さんは黒の皮のソファーに足を広げて座った。
何となく行き場を失った私は、ぴかぴかのフローリングの床にちょこんと座った。
「おい、」
「な、何ですか?」
「床痛くねぇか?」
「大丈夫ですけど…」
「痛ぇに決まってるだろが! 空いてるんだからソファーに座れ。
ほんっとうお前ムカつくわ。いっつもビクビク人の顔色を伺って
空いてるんだから、座れ。」



