空から舞い落ちる雪を見上げ、ブラウンのショートコートのポケットに片手を入れて朔夜さんは言った。

「雪ってまりあみたいだな」

ツンと尖った鼻先が僅かに赤く染まる。

「それって迷惑って事ですかぁ?」

視線をこちらに向けた朔夜さんははにかむ様に微笑んだ。

「儚くて、綺麗だって事だよ」

それは私が朔夜さんに抱いたイメージと同じだった。
いつもは意地悪そうに微笑むのに、時々こうやって優しい顔をするから戸惑ってしまう。

一晩降り積もったって、明日になれば溶けてしまう雪の様に、どこかに行ってしまいそうな儚い人だった。


自然に仲良くなって、いつの間にか一緒に居る時間が増える中

智樹さんは朔夜さん達と少しだけ距離を置いている事が分かって、その代わり智樹さんが忙しい時は二人と居る時間が増えた。

今日も悠人さんの提案で、病院帰り朔夜さんの家で鍋をしようとの話になった。 智樹さんには病院に行った帰り少し出掛けると誤魔化したが
雪予報が出ているから余り遅くならないように、との事。

朔夜さんのマンションに着いて鍋の準備をしている間に、雪は思ったより降り積もり灰色のアスファルトを白く染め始めた。

都内にある大きなタワーマンションの豪華なキッチンで、朔夜さんと並びお鍋の材料の準備をしていた。