智樹さんの笑顔が一瞬曇る。
そして直ぐに口を開いた。

「まりあ一人で自信がないと言うならば、俺と一緒に横屋敷グループを守って行くのはどうだろう?」

「一緒に?」

智樹さんの言っている言葉の意味が理解出来なかった。

「まりあ、俺と結婚してくれないか?」

「は……?」

ぶつかり合った視線の先、もう智樹さんは笑ってはいなかった。

真剣な眼差しで、こちらを見つめる。 笑顔の仮面を脱ぎ去った先にある瞳は、やはりどこか窮屈で歪なものだった。

結婚しようと私に言った筈なのに、彼の瞳の先は私の真後ろにある水槽ばかり映っていた気がする。

ブルーライトに反射した瞳の奥に、色とりどりの魚たちが優雅に舞っていた。


本当にこの館に閉じ込められ、囚われていたのは
私だったか、彼だったか。