どこに行っても「横屋敷様」と言われ歓迎される。智樹さんもそうだったが、彼らだって横屋敷家の人間で、沢山の事業に携わり顔はとても広いのだろう。
朔夜さんは何故か終始不機嫌だったけれど、悠人さんと私はお揃いのピンクと青のイルカのぬいぐるみを手に取って、子供のように笑っていた。
明日は彼女とデートだという悠人さんは中々に忙しい人で、都内のマンションでお別れした。
「まりあ~また遊ぼう~」と人懐っこく笑って、イルカのぬいぐるみを片手でゆらゆらと揺らした。
朔夜さんも明日の朝早くから出張で大阪に行くらしく都内のマンションに帰る。私は電車で帰ると言ったが、危ないからと朔夜さんの車で家まで送って貰う事になった。
「ほんとーーに楽しかったですね」
「お前そればっかだなー」
「だって初めて水族館に行ったし、嬉しくて。それにぬいぐるみを買って貰うのも初めてだったし」
「まるで子供だな」
朔夜さんの車は、智樹さんと少し違っていた。 高級車であるのは間違いないが、スピードがとても速い。首都高に乗っているせいもあるのかもしれないけど
車の窓から流れていく景色ばかり見つめていた。
東京は、私の目にはいつも寂しく映る。 大きなビルに煌びやかな光。 眩い程の光の都は人を切なくさせる物なのかもしれない。



