悠人さんの話をする朔夜さんは穏やかで、やっぱりどこかお兄ちゃんの様な顔を見せるんだ。
そして素直に人の良い所を見つけれるあなたも…やっぱり
「朔夜さんも優しい人だと思います」
「はぁ?」
こちらに向けた瞳は、水族館の青白い空間の中でやっぱり不思議な色で瞬いた。
「めっちゃトイレ混んでたー!
朔夜、まりあ何食べるか決めた?!
って、何か朔夜顔赤くない?!」
「べっつに赤くねぇよ!おい、まりあ何を食べるんだ」
「え~…絶対赤いじゃん、まりあに何か言われた~?
俺の居ない間に二人で秘密の話とか嫌だからね~?」
「そんなんねぇよ。それにしてもあっちぃ。早く出るぞ」
もしも私にお兄ちゃんが居て、普通の家族で育ってきたのならばこんな感じだったのだろうか。
今日一日、ずっと笑っていた。憂鬱な気持ちになる事は無かった。 楽しくて、またこんな時間を過ごしたいとさえ思った。
結局食べたい物は決まらずに、朔夜さんの知り合いのお寿司屋さんに行く事になった。
水族館で魚を見た後にお寿司を食べるなんて、中々サディスティックな行為だとは思うけど、朔夜さんの知り合いだ、と言ったお店は驚く程美味しいお寿司を出してくれた。



