「こんな狭い水族館に閉じ込められて…。
本来ならば大海を泳いでいるのが自然な形なんでしょうけれど」
んー…と考えた素振りを見せながら、朔夜さんは水槽へと目を向けた。
「そんなん、知らねぇよ。
大体魚に幸せか不幸かって感情があるのかどーかも知らねーし。
大体自由に大海を泳いでたって危険でいっぱいな訳だし、ここで人間どもに見世物にされてりゃー餌も貰えるし食うには困らねぇ
それはそれで幸せなんじゃねぇの?」
「それってどっちが不幸なんでしょうね?」
「さぁね、知らね。」
私と朔夜さんには、距離がある。 隣に居ても数センチ、見えない隔たりがある。
悠人さんのように友好的ではなかったけれど、その距離感は何故かとても居心地が良く落ち着いた。もうこの人の事は全然怖くない。
「今日は楽しかったか?」
「はい、とても。ありがとうございます。朔夜さんと悠人さんのお陰ですね」
「別に俺はついて来ただけだし、提案したのは悠人だろーよ。悠人にお礼を言っとけ。」
「私、悠人さん好きです。」
「本人に言ったら浮かれる姿が目に見えるな。
あいつは良い奴だよ。捻くれても仕方がねー環境でも曲がった所もねぇからな。
優しい奴だから、す~ぐ人に好かれんだ。だから勘違いした女がうじゃうじゃ集まって、いつの間にか彼女が3人とかになってんだよ」



