「私、水族館って初めて。」
「え?!マジで?!」
「うん。悠人さんは来た事ある?」
「そりゃーあるよー…。とはいっても朔夜と来るのは初めてだよね」
悠人さんはちらりと後ろに居た朔夜さんに視線を向ける。
「そりゃあ俺とお前が仲良く水族館に来てたら気持ち悪ぃだろーがよ」
「はは、確かに!
春太さんは子供達をどこかへ遊びに連れて行くタイプじゃないしね、昔っから忙しく仕事で海外とか飛び回ってたし。
俺も水族館は大人になってから来たよぉ~。女の子とデートでね。女の子って水族館好きじゃあーん」
「なるほど…」
「暗がりの室内に居ると男女の仲が急速に近づくんだって!」
悪戯っ子みたいな笑みを浮かべて悠人さんが言った。
「てゆーか俺がまりあの初水族館の相手なんて光栄!」
「…俺も居るがな…」
後ろでぼそりと朔夜さんが呟く。
二人のやり取りを聞いていると、自然と笑みがこみ上げてくる。
初めて行く場所は勿論ドキドキしたし、そういう普通の人なら当たり前にしている経験をしてこなかった私には全てが新鮮に映って、楽しかった。
水族館に居る間、悠人さんはずっと私の手を握っていたけれど、それも何故か全然嫌ではなかったし、後ろに朔夜さんが居てくれるのも守られているみたいでとても安心した。



