「うげぇ、見事に趣味の悪ぃ服ばっかり。智樹さんの好み丸出しだな。」
「そうですか?素敵な物ばかりだと思いますけど、私に似合うかは別として…」
「まりあはぼんやりしたカラーの服より、はっきりとした色味の方が合ってるよ。
この間着てたパステルカラーのワンピースとか最悪だった。
これと、これ、靴はこれだな。」
クローゼットの中からパパっと服を投げ捨てるようにベッドに落とし、朔夜さんは部屋から出て行こうとした。
「朔夜さん」
「何だよ。着替えまで手伝って欲しいか?」
「そうじゃなくって、ありがとうございます。」
「別に…お前の為にやってるわけじゃねぇから。
一緒に歩く女がダサいのが嫌なだけだから」
ぶっきらぼうな言葉を残し、朔夜さんは部屋から出て行った。
彼が取り出したのは、深い海のような藍色のワンピースだった。 あの人はきっと…怖いだけの人ではない。
あの夜私を無理やり押し倒した人と同一人物とは、今はもう思えなかった。
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「うわぁー見て、まりあ。こっち、こっち。」
悠人さんに手を引かれ、青白い水のアーチをくぐっていく。
悠人さんがデートだとはしゃぎ、朔夜さんが顔をしかめた、私が行きたい場所とリクエストしたのは’水族館’だった。



