「え?」

「まりあが笑ったぁー!初めて見た!
ね?朔夜、見た?」

悠人さんが朔夜さんの肩を掴み乱暴に振り回すと、彼はうんざりと言った顔をする。

「そりゃあ笑う事だってあるだろう。ぴーぴー騒ぐな、うるさい」

「でも嬉しい~!!」

朔夜さんの首元に抱き着く悠人さんはやっぱり犬のよう。
朔夜さんが迷惑そうに手を振り払った。 私はじゃれ合う二人を見て、言った。

「行きたい所、あります。」

悠人さんはやっぱり犬のような可愛らしい笑顔を見せて、朔夜さんは面倒くさそうに口をへの字に曲げた。


―――――

「お前さ、この間から思ってたけど壊滅的にセンスねぇな…」

日曜日。午前中から迎えに来た朔夜さんが私を見るなり言った。

行きたい場所がある、と言ってから数日。悠人さんが喜びながらOKを出してくれ、朔夜さんも渋々ながら付き合ってくれる事になった。

約束の時間は午前11時。朔夜さんは10分前に現れたけれど、悠人さんからは30分遅刻する!と連絡が入ったばかり。 そして朔夜さんは私の部屋に入って来るなり呆れた口調で言った。

「私これでも一応夜のお店でバイトした事があるんですけど」

私のメイク、ファッションを一通り見てげんなりしたように言ったのだ。