「まりあ…俺達の事は兄弟だと思ってくれていい」
「そんな、突然…」
「突然ですまない。けれど俺達はずっと春太さんからまりあの事は聞いていた。
だからこうやって会った今も他人とは思えないんだよ」
人からの好意には慣れていない。どこに行っても厄介扱いされてきた。
どんなに愛されたいと思っても、愛はどこにもなかったし
幸せになろうと思えば足元はすくわれる。 ずっとそんな人生だった。
「今は…お金もないし、どこにも行く宛てもありません…
だから暫くはここでお世話になろうと思ってます。 けれど智樹さん…」
高身長の彼を見上げると、猫のような目を細めて「ん?」と首を傾げた。
「私…正直横屋敷グループとか遺産には興味がありません…
本来であるならば、血の繋がりがなくとも祖父と一緒に過ごしてきた智樹さん達が得るものなのではないでしょうか…?」
智樹さんは目を細めたまま少しだけ悲しい顔をした。
私の長い髪を掴んで、優しく自分の口元へ持っていき目を閉じる。
「まりあは欲がないんだな」
掴まれた髪先から熱が伝わってきそうだった。 何て仕草一つ一つに色気のある人だろう。
思わず動揺してしまい、顔を背けてしまう。 こんな風に人に優しく扱われた事はなかった。



