食事を終えて智樹さんが館内を案内してくれた。
歩くのも疲れそうな大きな屋敷には、高級そうな絵画や壺が置かれており
覚えるのも大変な程の扉の数がある。 先ほど私が眼を覚ました白で統一された部屋は、智樹さんが私の為に用意してくれた部屋らしい。
ウォークインクローゼットを開くと、洋服や靴、バックなどが一式用意されていた。 どれを手に取って見ても、高級品だった。
真っ白の部屋の中で、唯一青白い水槽だけが美しい色彩を放っている。 これは完璧智樹さんの趣味らしい。
「携帯も預けておく。俺の連絡先や朔夜と悠人の連絡先も一応いれてある
何か困りごとがあれば俺を頼ったらいい」
そう言って智樹さんから携帯を手渡された。
そういえば私が持っていた携帯はどこにいったのだろう。水没してしまったのだろうか。
まぁ、あの中に急に私が消えて困る人の連絡先も入ってはいないのだが。
無表情で智樹さんから携帯を受け取り、小さな声で「ありがとうございます…」と言った。
彼は柔らかい笑顔を決して崩さない人だった。 穏やかに喋る口調は人を安心させる。
一般的に見れば、とても素敵な人なのだと思う。



