幸せな午後の昼下がりには、アメイジンググレイスの美しい歌声と、母親を笑わせたいと四葉のクローバーを探す、花の冠を被った少女の姿。
シロツメクサの花言葉は、復讐。
どうしてあの日、間違ってしまったんだ。
どうして、自分の中にある憎しみが癒えぬままだったのだろう。 君の優しさに触れて
何も知らない大切な少女を傷つける事が、何故出来たというのか。
ありがとう、と言って、笑ってくれた、大切な妹。 傷つける事で、自分が幸せになれるとでも思っていたのだろうか。
再び出会ってしまい、憎しみながらも愛してしまった罪は重い。 歪んだ愛情を、ただただ押し付ける事しか出来なかった。
優しく抱きしめてあげる事がどうしても出来なかった。
どうして俺達は、兄妹として産まれてしまったんだ。
けれど目の前―何度も広がって行く光景。
太陽の日差しを浴びながら、どこまでも続いていく緑と白の草原の絨毯の上
君は俺に笑いかけて、それにつられて笑ってしまう。 手を繋ぎ、どこまでも駆けていく。
あの夢か幻かも分からぬ美しい光景が、瞼の裏張り付いて離れない――。
あの記憶の中に閉じ込められていたいと、幼い自分がどうしてもこの場所から動きたがらない。
もう何も出来る事はない。
だからこの囚われた館の中から、君の幸せをただただ願う。 それが俺に唯一出来る贖罪だ。
この世でただ一人血を分けた大切な妹へ。
どこまでも続く自由と、そして幸せを――。
完結



