大人たちは勝手だ。

自分の都合で、子供をこんなにも不安にさせる。

不安に晒されて育ってきた子供は、情緒不安定になり自己肯定感の低い人間になってしまうと言う。

それでも幼い俺達は、大人たちの加護の下でしか生きられない。 


お母さんに笑って欲しいと願う少女は、全く笑顔を見せずに暗い表情のまま黙々と四葉のクローバーを探す。

結局手伝ったけれど、その時四葉のクローバーを見つけ出す事は出来なかった。

それでも少女に笑って欲しくて、俺はクローバーの上で鮮やかに咲き誇る白いシロツメクサを集めて、彼女の頭にぴったりな花の冠を作ってあげた。

それを頭に乗せてあげると、少女は顔をくしゃくしゃにして笑った。 無邪気な笑顔を見せてくれた――。


幸せは、探すものではない。 気が付けば、自然とそこにあるものだ。
そう思わせてくれるのには、十分な笑顔だった。 少女の笑顔を見て、頬が緩む。

「ありがとう――」

頭に乗せられた花の冠を両手で触りながら、そう言ってくれた。
しあわせ。 その言葉が広がって行くように、大きな風がふたりを包む。


確かに笑っていたんだ、あの時――。