「それって忘れる事ですかー?! 会って一番に言う事じゃないんですか?」
後ろから問いかけると、ベッと舌を出して悪戯な笑いを浮かべる。 そしてコツコツとドレスシューズの靴音を鳴らし、先を歩き出す
全くもう、そういう所は変わっていないんだから…。
小走りで駆け寄り指を掴むと、返すようにぎゅっと手を握り締めた。
「ところで、マジで仕事が忙しいんだが…」
「ほう」
「噂には聞いていたが、給料もぜんっぜんないし、暫くは貧乏生活だ」
「大丈夫。慣れてます」
「苦労をかけさせるつもりなかったんだけど
住んでる所めちゃくちゃ汚いぞ?」
「それも慣れてます。私はあなたと違ってお坊ちゃまじゃないので。
それより大きな問題があります。
私フランス語喋れません。英語も中学生止まりです…。」
「俺はお坊ちゃまだから、小さい頃から語学の勉強はさせてもらっていた。
お陰で困る事はない。その分はじーさんに感謝だな。あー、お坊ちゃまで良かった。」
「これだからお坊ちゃまは…
それよりも問題は山積みな訳なんですよ。
私フランスにずっと滞在するって訳にもいかないし」



