「だって、突然だったし…! 慌てて来ちゃったし。
まさか智樹さんが用意してるチケットが次の日だとは思わなかったから
ほぼ着の身着のまま来ちゃったんだけど…」
訝し気な瞳をして、上から下まで私のファッションチェック。
…だって!慌ててトランクに必要最低限の荷物だけ詰めて、飛行機に飛び乗ったんだよ?!
悠人さんは空港まで送ってくれたけど、またまた号泣だった。ギリギリまで引き止められて、ろくに準備さえ出来やしなかった。
それ以前に問題は山積みなのだが…。
「久しぶりに会ったのに言う事がそれなんて酷すぎる…。
もっと言うべき事があるんじゃないですか?」
一通りファッションチェックを終わらせた朔夜さんは、私のトランクを引きずりながら横を歩く。
感動の再会の筈が、まさかファッションチェックされるとは思わなかった。まさかスキンケアを怠っていた事さえバレるとは…。
ちょっぴり拗ねた素振りを見せながら、唇を尖らせてブツブツ言いながら彼の横を歩く。
ぴたりと足を止めて、朔夜さんは私の方へ向きなおると自分の唇を私の唇へ合わせる。
「言い忘れてた。 ――会いたかった。」
言い終えた後、何食わぬ顔で私の前を歩いていく。



