「何を。君にどうしようもない事をしてきた馬鹿な男にお礼を言う必要があるか…。
最後まで大馬鹿野郎だな…。
君にしてあげられる事が全く見つからない…。
俺達はもう一緒に居ても、普通の兄妹には戻れない。
俺が出来る事と言えば、君を手放し自由をあげる事だけだ。
でも、もしも生まれ変われるならば――」
智樹さんの視線が真っ直ぐに、青白い水槽へと向かう。
照らされた光の先に、二匹の熱帯魚が絡まり合いながら水面の中ゆっくりと体をすり抜けていく。
どうしようもなく愚かで、救われない愛の果てで交わう様に複雑に絡み合う。
智樹さんはそれ以上何かを言いかけて、結局何も言わなかった。
私達は、誰もが赦されたかったのかもしれない。
誰もが独りぼっちで震えて、けれど人は一人だからこそ
誰かを愛する事が出来る。
愛する事で赦されている。 あなたも、きっと私も――。



