「三匹…か」
「それは、兄弟」
「兄弟……」
ガラス玉の様な瞳で、智樹さんはアクアドームの中を愛しそうに見つめた。
水の中
惹かれ合い、絡まり合い、溶け合っていく、眩い光を放つ魚達。
交わうその姿は まるでここでしか息が出来ずに、この場所から解き放たれる事を嫌う。
閉じ込められたのではない。
自ら
その身を預けていくだけ。
私達は、まるで水槽に閉じ込められた魚の様だった。
ここは窮屈で、少しだけ居心地が良い。時間は静かにゆったりと流れていく。
まるで世間の喧騒から隠されるように佇む、美しき館。
危険な事は何もなく、ただただ安全が保障された場所で、優雅に狭い水槽の中を行ったり来たり
囚われている訳ではない。 自ら望んで守られている。
禁忌を犯した私達を赦すように、静かに隠してくれている。
アメイジンググレイスが響き渡る部屋の中で、智樹さんはゆっくりと目を閉じた。



