その時間は、私にとっての癒しになっていた。
私に出来る事ならば、何でもしてあげたい。
智樹さんの心に欠けた物を埋めるのが私の役目であるのならば、一生この館の中で生きて行ってもいい。本気でそう思う。
今日も智樹さんの部屋の中で、ネオンテトラがゆったりと泳いでいる。
ベッドに入る智樹さんは安らかな顔をしている。 私は椅子に座って、彼の顔を見るのが好きだ。
ちっとも似ていないと思っていたのに、どこか似ている。 確かに血を分かつ兄妹の姿だ。
「智樹さん、誕生日おめでとう」
「ありがとう、まりあ」
「私ね、智樹さんに誕生日プレゼントを用意したの」
「そんなのいらないのに…。俺はまりあが居てくれるだけで嬉しいのに」
「はい、これ。実は手造りなの!すっごく不格好だけど
私の誕生日にも智樹さんがくれたよね!」
「これは……スノーアクアドームか。」
智樹さんが目を凝らした先には、ちょっとだけ不格好なアクアドーム。
「スノーなの?アクアなの?一体どっちなんだろ…。
でもね、智樹さんがくれた奴みたいに綺麗ではないんだ。
自分で作ったからかな?私ってやっぱり不器用だよね…」
少しだけ笑ってアクアドームを受け取った智樹さんは、それを宙に掲げてゆったりと泡の落ちる様を見つめていた。
不格好なアクアドームの中には、黄色と青のネオンテトラが三匹浮かんだ。



