和やかな時間は流れる。
けれど、その中で探してしまう物もある。
失ってしまった物を、いつでもどこでも探していた――。 もうどこにもいない、あの人を。
笑い合う中にも失くした物が一つ。
ここにあった、不器用な笑顔が一つだけいつも足りない。 足りない物を補っていく様に、今日も生きていた。
思い出さない日はなかった。そもそも忘れた日が一日たりともなかったから。 あの不思議な色の瞳を、下手くそな笑顔をいつだって探していた。
まりあって料理が下手糞だよね、堂々と失礼な事を言って退ける悠人さんはそれでも私の作ったご馳走をお腹いっぱいたいらげて
誕生日だからってシャンパンも開けて一人酔っぱらう。明日は大事な研究が入っていると言っていたのに、飲むだけ飲んで潰れて眠ってしまった。
智樹さんの誕生日は、頼りない三日月の夜だった。
悠人さんをベッドまで運ぶと、智樹さんの部屋に行く。
それもいつしか日課になっていた。 病院から退院した後、いつも眠れないと言っていた智樹さんに、子供の様に子守唄を歌うのが日課になっていたんだ。
アメイジンググレイス。私の声を聴くと、智樹さんはよく眠れる、と喜んでくれた。 指一本も触れずに、ベッドの中で私の姿を優しい瞳で見つめていた。そしていつしか深い眠りへと誘われていくのだ。



