【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~


「そうかな?俺はとても君に似ていると思ったけれど
君はとても美しい女性だと思う」

水槽から私へと目線を映した智樹さんは、とても真剣な瞳をしていた。

柔らかい物腰に、どこか強い物を感じる。 正面から美しいと言われたのは初めてで、思わず目線を逸らしてしまう。

「そんな事ありません」

「まりあは自分が分かっていないだけだ。
したい事も行きたい場所もないならば、暫くこの屋敷に居ると良い。」

「でも…」

「ここに居る権利が、君にはある。
 
それにしても全く正反対の事を言うんだな?」

「正反対の事?」

「春太さんの娘さん。あゆなさんはここは息苦しい、と言ったそうだ。
私にはしたい事もあるし、行きたい場所もあるから、こんな牢獄のような屋敷に閉じ込められたくない、と。
結婚も決まっていて許嫁も居たのに、平凡だった君のお父さんと駆け落ちをしたそうだよ」

息苦しい…。その気持ちはほんの少しだけ理解る。

私はどこまでも独りぼっちで誰にも必要とされていないこの世界自身に息苦しさを感じていた。

誰からも咎められる事のない自由とこのお屋敷に閉じ込められる不自由は、一体どちらが息苦しかっただろうか。 私は自由の中に居ても、いつだって息苦しかった。

誰かに助けて欲しかった。愛されたかった。