【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~


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残されたものは、この美しい水槽館と祖父が残した莫大な遺産だった。

横屋敷グループの権利は親戚に渡り、この館で智樹さんと暮らす事を私は自分の意志で決めた。

病院にカウンセリング。投薬治療と行動療法で智樹さんの体調は徐々に良くなってきた。


始めは、私が妹である以外の記憶がぽっかりと抜けてしまった。けれど徐々に記憶も取り戻していった。

それが智樹さんにとって良い事が、悪い事かは分からない。 全てを思い出した時、彼は再び苦しむだろう。 彼が苦しむ姿をもう見たくは無かった。


悠人さんも智樹さんの体を気遣い、横屋敷の家に訪れる頻度はぐっと増えた。勿論私を思いやっての事もあるのだろうが。

穏やかな時間は流れていく。
智樹さんは、私をとても愛してくれた。それは、妹として、兄として
二度と智樹さんが私に触れる事はなかった。

ただの兄妹して過ごす時間は、私がずっと求めていた物で、智樹さんが本当に欲しかった物であろう。

そうやって過ごしていくうちに、季節はあっという間に冬を迎えようとしていた。
私と、この美しい館の三兄弟が出会って1年の時が過ぎようとしていた。
智樹さんの体と心は穏やかに、少しずつ元気になっていった。