「そうだな、まりあにいきなり言っても混乱するだけだとは思った。
俺は君のしたようにすればいいと思う。何をしようとどこに行こうとそれは君の自由さ。
俺達は春太さんに頼まれて、まりあの行方を捜していた。ただそれだけなんだよ」
したいようにすればいい。
私は死ぬつもりだった。
どこに行こうと自由。
どこにも居場所なんかなかった。
だから私は自ら自分の人生に終止符を打つつもりだった。
けれど想定外に助けられてしまった為、自分がどうしたらいいか自分でも決めれない。
「したい事なんて…行きたい場所なんてない…」
ぽつりとそう言うと智樹さんは涼しい目元を青白い水槽へと移した。 私の目を見ずに言った。
「春太さんから君位の歳の頃のあゆなさんの写真は見せて貰った事がある。美しい人だった」
「私は母とは似ていませんから…」
母は美しい人だったと思う。生活に疲れ貧困に嘆いていなければ今現在ももっと。
頼りなく痩せ細った体に、真っ白な肌に大きな瞳をしていた。どことなく弱々しく、物静かな人だった。
余り母からは構われた記憶がない。 女手一つで私を育ててくれて、再婚が決まって義理父が出来た後もちっとも幸せそうではなかった。
幸は薄そうだったが、美しい人だったのは間違いない。



