「まりあ…」

「私を、もう一人にしないで…」

どうしてその言葉が自然と口から出たのか。

口の中がしょっぱかった。それが海の潮のせいか、自分の涙のせいかは分からない。
私を見つめる智樹さんの瞳にからも大粒の涙が零れ落ちて行ったから。

暗く染まる海の中、まるで子供の様に泣きじゃくった。 行かないでよ、一人にしないでよ、お母さん。 あの日の子供の様に声を上げて泣いた。

縺れ合った体を、抱き寄せたのは一体どちらが先だったのだろうか――。


朔夜さんと悠人さんの手に寄って、私達は暗い海から救出される事となった。 半分意識を手放していた智樹さんは虚ろな瞳で、ゆっくりと目を開けた。

「馬鹿野郎…」

智樹さんに手を差し伸べた朔夜さんの瞳が赤くじんわりと滲む。
悠人さんに至っては大泣きで、泣きながら救急車を呼んでいる。

その三人の姿を見て、やはり血は繋がっていなくとも兄弟なのだと感じる。 私と智樹さんの方が、よっぽど歪だ。

結ばれた筈の縁を、自ら解いてしまったようで――ぐちゃぐちゃに絡み合ってしまっても、丁寧に解いていけば

また真っ直ぐに繋がる日は来るのではないだろうか。