【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~


吐き気が止まらなかった。 これは、智樹さんへの嫌悪感とはまた違う。別の感情だ。

どうして私は生まれてしまったのか――。

うっとその場でソファーに寄りかかり口元を押さえる私へ寄り添ったのは、朔夜さんだった。

「まりあ…」

「私…どうして…」

「まりあは悪くない。自分を責めるような事は止めろ」

あの日も、母の自殺を思い出した私に、朔夜さんは言ってくれた。

まりあは悪くない、と。 私の肩に落とされた朔夜さんの温かい手。覗き込んだ顔。 私より朔夜さんの方がずっと泣きそうな顔をしていた。

坂本さんと向き合っていた悠人さんはえらく混乱した表情を浮かべていたけれど、何かに気が付いたように顔を上げた。

「坂本さんが、春太さんに…まりあと智樹さんが血の繋がった兄妹だって話したんだよね?」

「えぇ、そうです。
あれは春太様がお亡くなりになる少し前です。
この事は智樹様と…智樹様の身辺を探っていた…あゆな様をよく知る私しか知らない事実でしたので」

「だから春太さん…智樹さんには全てを与えないって結論に至った訳か…」