「私が…智樹さんの…?」
「兄である事を知っていて、あなたを抱いた。それは全てまりあ様を傷つけ、絶望させる為だった気が…私には思います。
けれど…
まりあ様と一緒に過ごしていく中で、智樹さんに変化が見られました。
智樹様は…まりあ様を愛していらっしゃった…。 だから全てが、自分のしている全てを許せなくなってしまった。
皮肉なものですね、傷つけ壊そうとした物が、自らを傷つけて壊してしまうなんて」
’へー、そうなんですねぇ。こんなに綺麗なのに。
じゃあこれは兄弟ですね。’
’そうだな、’キョウダイ’かもしれん’
’でもそれじゃあ一匹足りません。智樹さん達は三人兄弟だから’
’その’キョウダイ’ではない’
兄妹――。
私の母が、智樹さんと彼の母親から、父親を奪った。
私という存在を、智樹さんは憎んだ。
何か言いたげな瞳の奥に隠された、冷たさと優しさ。 悲しい声色で名を呼び掛けた。
智樹さんが本当に欲しかった’家庭’って…。 それは母親と父親が居て、幸せだったあの頃の名残り。
私を愛していると言った。それは妹として、それとも女として?どちらにしても悲しい結末。
智樹さんは私を抱いている時いつだって苦しそうだった。 悲しそうだった。 辛そうだった。



