「いつかまりあに言ったな。 俺が君を愛したら、君は俺を憎むのかなって…。
俺は…こんなに君を愛してしまって、今全部後悔している。」
「智樹さん?」
その寂しい笑顔は、今にも消え入りそうだった。
どうして?あなたにとって私は横屋敷家の全てを手に入れる為の道具でしかなかったはず。
全てを失ってもなおも、そんなに愛しそうに私を見つめるの?
「どうして俺は…君がこんなにも愛しいんだ。…憎かったはずなのに…。
全てを壊したかったはずなのに…
愛しては…いけなかったのに…君だけは――」
抱きしめられた胸から感じる鼓動が少しずつ速くなっていく。 見上げた智樹さんの顔色が悪い。額にはうっすらと汗をかいている。
私の体を引き離すのと同時に、智樹さんは苦しそうに胸を押さえてその場で蹲ってしまった。
「智樹さん…!」
「大丈夫だ。騒がないでくれ。」
「顔色がすごく悪い…。体調が悪いんじゃあ…」
「平気だ…。薬を飲めば収まる」
「薬?」
「そんな不安そうな顔をしないでくれ。 別に不治の病って訳じゃない。」



