「ちょっと、朔夜も…!
智樹さんは…春太さんの代わりに横屋敷の親戚連中から俺達を守ってくれてたんだよぉ?
それに横屋敷グループは…智樹さんが居なくちゃ駄目だよ…。」

「あん?お前マジでどっちつかずだな。
こいつがまりあにした事を忘れたのか?」

「それとこれとは話が別でしょう…?!」

「ちょっと…悠人さんも朔夜さんも止めてよ…。兄弟同士で喧嘩なんかしないで…!」

「兄弟なんかじゃねぇよ…」

朔夜さんの低い声が響く。

「少なくとも、智樹さんは俺達を兄弟とは思ってなかっただろう。」

睨みつける朔夜さんを前に、智樹さんは表情を一切変えず前を見つめていた。

こんな結末を望んでいた訳じゃない。 智樹さんの欲しい物、全てを奪いたかった訳じゃない。

寧ろ智樹さんが望むなら、と 横屋敷家の全てを彼に譲ったのは私だ。 じゃあ、何故祖父はこんな遺言を最後に残したと言うの?

「俺は、それでいいと思っている。
春太さんが残した遺言だ。それに従うさ。
横屋敷家は出て行く。」

「とも…きさん…?」

「後は先生にお任せ致します。どうぞよろしくお願いします。」

そう言って弁護士先生に頭を下げて、智樹さんはソファーから立ち上がった。