「横屋敷家の遺産など…欲しくはない。他の女等、いらない。
君だけが欲しい。 だから俺は…こんな恐ろしい事を……」

その目の縁が赤く染まって行く。 私を愛していると言った智樹さんは、私ではないどこか遠くを見つめていた。

「智樹さん?智樹さん?」

「まりあ、俺の事を絶対に許さないでくれ――。俺は君になんて事を…
愛していたのに…こんなにも愛しているのに…!
お願いだ…俺から、離れて行かないでくれ…」

「智樹さん、大丈夫?!ねぇ、お願い。しっかりして。 私ここにいる。いるよ?
憎んでいない。絶対に憎まない…。だから…ねぇ智樹さん…」

私の言葉が彼に届いていたのだろうか。

愛している。何度もそう言って私を抱きしめた。 けれども智樹さんは今にも崩れ落ちそうな嗚咽を上げ続けた。


本当に閉じ込められていたのは、私だったのだろうか。
罪と罰の中で、この館に囚われ続けていたのは私ではなくて――。