にこりと智樹さんへ微笑みを落とすと、彼はやっぱり優しい顔をしてくれる。
こんな風に出会わなければ…こんな関係になっていなければ… けれど私達の間にある歪は、もう元には戻せない。
智樹さんがぎゅっと私の手を握り締めて、その手の中に中くらいの真っ白の包み紙を置いた。
「これは?」
「それは、誕生日プレゼントだ」
「誕生日?」
「何だ、自分で忘れていたのか? 今日は君の21歳の誕生日だろう?」
「やだ、私ってば…自分の誕生日なんてすっかり忘れていた。
どうして知ってるんですか?」
「君の事ならば、昔から何でも知っていると言った」
自分の誕生日すら忘れてしまっていたなんて、どうかしていた。
とはいえ、誕生日に誰かにお祝いをされた記憶も余りない。 寧ろ自分が産まれてきてしまった日なんておめでたい日とも思えなかった。
それより驚いたのが、智樹さんが私の誕生日を知っていて、プレゼントまで用意してくれていた事なのだが。
「ありがとうございます。嬉しいです。開けてもいいですか?」
「大した物ではない。 その辺の雑貨屋で買った物だ」
包み紙を開くと、そこには手のひらサイズのスノードームが入っていた。



