裕福とは程遠い世界で、私達家族はいつも貧困だった。 母は、私には余り興味がなかったようで育児放棄に近い事をされていた。
あの母が、こんな大きな家の娘…?にわかには信じられなかった。
ボロボロになっていつだって疲れていた。身売りに近い形で仕事をしているのを知ったのは、小学生の高学年あたりだった。
そして母は……私が中学生の時に自ら命を絶った。 第一発見者は私だった。
どうして?
母がここに居たのならば、一生裕福に暮らせていただろう。
明日食べる物に困る事もなく、お金に溺れる事さえなかったはず。なのにどうして母はあんな生活を…?
「あゆなさんは君を身ごもった時に、この家を飛び出した。
横屋敷という名は全て捨てていくと言って。
けれど横屋敷春太の娘は生涯に一人だけだった。
だからつまり、この屋敷と莫大な資産を受け継ぐ権利を持っている正当な人間は現在
椎名あゆなの一人娘である、まりあしかいない。 そして会長自身もそれしか認めないと言っている」
「私……?」
「そう、君はただ一人横屋敷春太の遺産を受け継ぐ正当な後継者って訳さ」



