「いつか言ったな」
「え?」
「まりあと俺は同じ境遇だから、欠けた物を埋め合える、と。
それは俺の勘違いだったのかもしれない。
俺はどうしたって君を傷つける愛し方しか、きっと出来ない…。
そもそも同じ傷を持つ者同士一緒に居たとして、埋まる所かその傷跡は広がって行くばかりなのかもしれない。」
「私には、よく分からない…。」
よく分からない。
けれど、分からないけれど分かっている事もある。
愛情を求めていた。どこにあるのかも知らずに、ただただ愛情そのものを求めていたから、気づけなかったのだ。
気が付けば、優しく灯される明かりの様に…側に居てくれた。 一緒に居ると、温かい気持ちに自然となっていく。
愛は、気が付けばそこにあるもの。無理やり探したり奪ったりするものなんかではない。
朔夜さんが、自然と私の側にいてくれたように。
「つまらない話をしてしまって申し訳ない。」
「いえ、そんな事ないです。
それに私、この場所が好き。 今時の水族館よりも、優しい感じがして…この場所が好きです」



