【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~


「君の言う通りだったのかもしれない」

「え?」

「愛された記憶があるから、父がこんなにも憎いのだと感じるのだ。
消そうとしても、この記憶が頭から消える事はない。だからなおさら憎いと感じる。
俺は、ただ母と父と一緒に居たかっただけだ。 大人になってもこんな気持ちになるなんて、俺は大人になりきれていないのかもしれない。
全てを手にしたように見せても、それは全て見せかけで 本当に欲しかった物程、自分の手には入らないのだ。
きっと、いつだってそうだ」

智樹さんの孤独に怯える瞳は、自分ととても似ている様な気がした。 だからあなたをこんなにも懐かしく思うの?理由は本当にそれだけ?

欲しくて仕方が無かった愛情。 いつだってどんな時だって、欲しくて欲しくて堪らなかった。 けれど手に入らなかった。

私の人生だってそうだ。手に入れたいと思った物は、いつだって指の隙間から滑り落ちていく様に儚い物達ばかり。


同じ傷がある。 欠けたものを持っている者同士。 私達はその欠けたものを埋め合えるのだろうか。 智樹さんの言っていた通り。

彼と一緒に居たら私のずっと欲しかった物が手に入るのだろうか。