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智樹さんが私を連れ出してくれた場所は、様々だった。 特に楽しそうにしている素振りは見せなかった。静かな時間がただただ流れていくばかりだった。
美術館や花の咲き誇る温室のガーデン。 とにかく静かで心が落ち着く場所ばかりで、好かれているとは思っていなかったが、ふとした瞬間、智樹さんがとても優しい目で私を見ているのに気が付いた。
あんなに乱暴にされたのに、彼のエゴを押し付けられて館に閉じ込められていると言うのに
一緒に居る時間だけはとても優しく流れた。
まるで彼は、後に自分に降りかかる運命を全て知っていたが如く
惜しまれるようにその数日間、私と共に過ごした時間はとても優しいものだった。
その日も、智樹さんは私を水族館へ連れてきてくれた。 朔夜さん達と行った様な華やかな水族館ではなく、小ぢんまりとしていて田舎にある何の変哲もない昔ながらの小さな水族館だった。
「智樹さんは、昔から水族館が好きなんですか?」
「ああ、アクアリウムは元々は春太さんの趣味だ。 俺もまあ、嫌いではない。
青白い光を見つめると心が落ち着く。」
「私も、好きです。 水音も静かで居心地が良い」



