「夕食が出来るまで、君に説明をしなくてはいけない事がある。
君自身も何が何だか分からない状況だろう」
柔らかい笑みを持っている智樹さんは、人の気持ちを汲み取るのがとても上手な男性だった。
「まずは俺達とこの横屋敷家の事を。
ここは横屋敷旧財閥の当主 横屋敷 春太の所有物だ。」
「…横屋敷、財閥…?」
「江戸時代、呉服屋から始まり
数々の事業を展開していった。
現在でも有名な会社やグループが傘化には沢山ある。
そんな横屋敷グループの現在のトップは、横屋敷春太という訳だ。
とはいえ、横屋敷春太は現在余命が宣告されている身で、病院に入院中ではある」
「全然理解出来ません…。
私はそんな人を知らないし、そんな人々と接点を持つような人生も送っていませんし」
「それが大ありなんだな」
智樹さんはふと右にある水槽に目をやりながらゆっくりと答えた。
「椎名あゆなさん。つまりは君のお母様は、横屋敷春太の一人娘。」
「え?!」
目の前の男が何を言っているのか、全く理解出来なかった。
母は、私をお腹に身ごもっている時に実家を飛び出したという。 私の父親は私が産まれる前に不慮の事故で亡くなってしまい
母はその後最悪な男と再婚した。働きもせずに酒びたりでギャンブルばかりしていて、その義理父の代わりに昼から夜まで働きっぱなしだった。



