「ふぅ…」
「まりあ様…、お食事の方はどうされますか?」
「坂本さん…あんまり食欲がないので」
「あんまり食べないでいると体に良くないです。ただでさえまりあ様は痩せていらっしゃるのに…」
「大丈夫です。ありがとう」
横屋敷家に戻されて、坂本さんには何度も頭を下げられた。
坂本さんが悪い訳じゃないのに…何度も何度も。 智樹さんは私が朔夜さんの元へ行った事に何となく勘付いていたのだと思う。
だから全ては坂本さんのせいじゃない。毎日こうやって私の体を気遣ってくれる、彼女の表情は不安そうだ。
朔夜さんと一緒に食べた鍋美味しかった。一緒に作った卵焼きも美味しかった。
そんな事を考えながら、今日もこの広い屋敷で時間を潰す。 書斎で本を開いてもため息は止まらない。
これからの人生の事を考えていた。朔夜さんに言われたから、高校認定試験を受けて自分の道を探したかった。
こんな時にまで、朔夜さんの事ばかり考えている自分にうんざりしてしまう。 でも私、やっぱりあなたに生かされた気がしてならない。 本来であるならば、私はあの日あの暗く冷たい海で死んでいたんだから。