「もう…止めて…。
智樹さん…!もう止めて!
私、私…横屋敷家へ帰りますから…!だからこれ以上朔夜さんを傷つけるのは止めて!」

セーターの中へ入って行く手はぴたりと止まった。 これ以上、見ていられない。朔夜さんが傷つけられる姿は…。

知らずに涙が頬を伝っていた。キッと彼を睨みつけるように見上げると、智樹さんは唇を噛みしめたままこちらを見下ろした。 そして独り言のようにぼそりと呟いた。

「…そんなに好きか…」


思いっきり手を引っ張られると、引きずられるようにその場から引き離されていく。

まりあ――。私の名を呼ぶ声が耳の奥でどこまでも響いていた。 あなたの綺麗な瞳をこれ以上曇らせたくない。

もしも私の存在があなたの夢さえも奪う日が来るとしたら、そんな自分は許せない。 私は結局誰かに支配されなくては生きてはいけないのだ。

初めて芽生えた恋という気持ちを、神様は許してはくれない。