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結局その夜も抱きしめ合って眠ったけれど、朔夜さんが私を抱く事はなかった。
躊躇っているようにさえ、感じた。 男の人と一緒の布団に入って、手を出されない経験なんて今までした事なかったから、戸惑ってしまう。
薄暗いカーテンの隙間から僅かな光が入る。 小さな寝息を立てて静かに眠るあなたの、長い睫毛ばかり見つめていた朝。 それは初めての愛に触れた朝だった。
愛されたいとあれだけ望んできたのに、私自身が誰かを愛した日があっただろうか。
望んでばかりで、与えることを怠っていた自分がどこかに居た。 人はそんなものだとどこかで諦めるのが癖になっていた。 けれど…私、もうあなたへの想いだけは譲れない。
愛されたいとばかり願っていた自分が、初めて人を自分から愛したのだから。
「おはよう…」
ゆっくりと瞼を開けると、グリーンがかった瞳が優しく揺れた。 ゆっくりと指の先で私の髪を梳いていく。 その仕草一つ一つが繊細で美しい。
「起きてたの?」
「大分前から。 まりあ、俺の事ずーっと見てただろ?」
「気づいてたくせに寝てる振りしてたの?意地悪ね」
「可愛すぎて意地悪もしたくなるもんだ」



