「んな逃げ帰る事ぁねぇだろ。 折角だ。どっかで遊んでいくか?」
私もあなたと一緒に居たい。そう言葉に出して言いたかった。 けれど独りよがりのようでとてもそんな言葉言い出せない。
だって私は…智樹さんに抱かれて…。思い出さないように笑顔を作ると、朔夜さんに向かってこくんと頷いた。
今日だけ…。ほんの少しでいい。神様、この人の瞳の中に映るのを許して。 必ず自分の在るべき場所へ戻るから。
誰かと一緒に居たいと望む事を、ほんの少しだけ許してください。
「どこに行きたい?」
「まずは病院に…」
「あいよ。俺はじーさんになんか会いたくねーからさっさと行ってこい。
その後行きたい場所は?」
「水族館と動物園と遊園地…。」
「お前…どんだけ欲張りだ…」
両手で朔夜さんの腕を掴むと、ぼろぼろと涙が零れ落ちていく。
「おい、何泣いて…」
「それに…夜景も…海も…」
どうして自分がこんなに泣いているのか分からなかった。 どうして子供みたいに彼の腕を掴み、もう逃げて行ってしまわないように必死になっているの?
ずっとずっと諦めていた。
自分が誰かから愛される事も、求められる事も、離れていかないでと願う事も
手放して生きて来た。



