「私には、こう仰ってました。父親が居ない分、自分が頑張らなくちゃいけないんだ、と。でもまりあをどう愛したらいいか分からない、とも。」
「そう…ですか。」
「まりあ様…。 私はあなたと智樹さんの結婚には賛成しかねます。
まりあ様に好きだと思われる方がいるのならば、なおさら。ここに閉じ込められていてはいけません。
あなた達が一緒に居る事は、互いに傷つけ合う事しか出来ないと思います。」
ハッキリと私の目を見て言った、坂本さんの顔が印象的だった。 彼女は口元に手をあてて、皺になっている目元を潤ませた。
「まりあ様に…幸せになってもらいたいと思います。
智樹様では…まりあ様は絶対に幸せになれません」
坂本さんの本当に言いたい事は分からなかった。
私が幸せになれないのは、智樹さんが私を愛していないから?
そんな彼にこの館に閉じ込められているのは、幸せだとは言えないから?
それとも他に理由があるの?
それでも苦しそうなその表情を見て、彼女が私に本当に幸せになって欲しいという事は十分に伝わった。



