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智樹さんは時々私に執着を見せて、けれど普段は素っ気ない態度を貫き通した。
私を抱いたあの夜から。
彼の考えている事は理解出来ない。 理解しない方が楽だったのかもしれない。
「二日程出張が入った。」
その日の朝も突然告げられた。あんなに優しかった智樹さんが変わってしまった。
悲しくはなかった。寧ろ私へ向ける彼の執着は何故か憎しみに似ていると気が付いていたから。
「智樹様、横関さんがお迎えに来られましたが」
「ああ、今日は彼女も出張に同行するように頼んでおいたんだ。
坂本さん、悪いけれどお茶の準備をしてくれるか?
少々準備に時間がかかる。 彼女を俺の部屋に通してくれ」
スッと立ち上がる智樹さんは私の顔も見ずに言った。
食べかけの朝食。その横に彼がいつも愛用している黒の手帳が置き去りにされている。
ダイニングルームを通過する際、坂本さんに案内される横関さんという女性が通り過ぎた。
一瞬足を止めて、こちらをちらりと見つめ頭を小さく下げた。 智樹さんとより少し年下だろう。けれどとても大人びた美しい女性だった。
私を見て、一瞬口元をにんまりと上げた。 …悠人さんが言っていた智樹さんと付き合いのある女性。多分その人だと思う。



