【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~


浴室も一人で入るには大きすぎる。丸みのある大きな浴槽には温かいお湯が張られており、浴槽とシャワールームが独立された造りになっている。

お湯に浸かり、自分に起こった事態を整理する。
美しく豪華なお屋敷の中には、この建物に引けを取らぬ程の美しい三兄弟。

そして彼らは何故か私の母親を知っており、私の人生の一部分を知っている。…というか、調べたと思う。

朔夜さんは智樹さんに言っていた。 ’あんたのご所望の椎名まりあだ’、と。だとするのであれば、智樹さんが私を何らかの理由で必要としているという訳だ。

そして記憶にはないが、あの海で命を絶とうとした私を救ってくれたのは、朔夜さんと悠人さんの二人、かいずれかのどちら。

どちらにしても投げ捨てようとした私の人生に、干渉してきたのは彼らに違いはないが。


何の為に?何が目的で?  こんな館に連れられる訳は分からない。


着替えにと用意されていた長袖のワンピースは白で首元に黒のベロアの紐がついていた。それをリボン結びにし洗面所の前に立つ。

鏡の中に映った生気のない女には全くの不釣り合い。物の価値が分からない自分でもこれが高級品であるのは着心地で分かった。

唇はカサカサで目には力がない。 伸びっぱなしの茶色のロングヘアーは傷んでいて、先程余りにも美しい三兄弟を見てしまったせいか、目も当てられない程醜い姿が鏡には映っている。

鏡の中の自分から目を逸らし、浴室から出て行くとだだっ広い廊下が続いていく。