「それは、恋って感情でしょう。 それが初めてなら、まりあの初恋じゃんか。
本当に馬鹿だねー…朔夜もまりあも馬鹿なんだからー…」
正体不明だったこの感情は、初めて知った恋。
彼に指摘されてはっきりと自覚できた事。
悠人さんは私の両手を取って、ぎゅっと握りしめた。 その手は少しだけ汗ばんでいる。
「ねぇ、この館から抜け出せないの?」
「最近…智樹さんの監視がきつくって…。
というか智樹さん…が少しだけ怖い…」
「俺さー、何とかまりあと朔夜が会えるように時間を作るからさ!俺に任せてよ!」
「悠人さん…それは」
「だってぇー…互いに想い合ってるのは傍から見ても明らかなのに、どーして我慢する必要があるの?
まりあと朔夜はお互いにきちんと話をするべきだよ。
まりあはこのまま横屋敷家に閉じ込められて生きるようなままで本当にいいの?!」
悠人さんの握りしめた手に力が入る。
でも、私会いに行っていいの?朔夜さんに…。
それが智樹さんにバレたら? 横屋敷の財産や地位も名誉も何もいらない。智樹さんが欲しがるなら、全部譲る。
私はそのつもりだったのに、きっと彼もそれを分かっているのに、何故彼は執拗に私を求め続けるのだろう。
祖父にきちんと話さなくてはいけないのだと思った。 私に譲る物は、何もなくて良いと。



