「突然こんな所に連れて来られて混乱していると思うけれど…」
「いえ……」
「弟達が失礼な事を君に言ったかもしれないが…。
特に朔夜は口が悪いので、嫌な思いをしたのならば申し訳ない」
そう言って頭を下げる。そんな所作一つ一つが丁寧で、上品な人だった。
と、いうかこの人も’横屋敷’二人は兄弟だと言っていた。それならば、智樹さんもあの人達と兄弟なのだろうか。
そうだとすれば、似ていない兄弟ではある。 三人とも整った顔立ちをしているが、雰囲気や見た目は全く違う。
「朔夜達から連絡が来た時は驚いた。海で君が意識を失っていたと。
取り合えず話したい事や説明がしたい事は沢山あるのだが、取り合えずお風呂に入って来なさい。
お湯は沸かしておいて貰っているから。着替えも用意してある」
智樹さんに言われるがまま、浴室に案内された。
あの大きな部屋にも驚いたが、廊下に出て見て更に驚いた。 赤い絨毯の長く続く廊下の左右には、幾つもの扉があり迷子になりそうな位広い。
普通の家ではない。館という方が相応しい。外国のような造りの、レンガ調のとても美しいお屋敷だった。



