続々と帰宅難民のニュースが取り上げられる。 横屋敷家の館は都心から少し離れている。 交通機関がストップしてしまったら帰れない。勿論車も出せやしないだろう。
「送り届けておけば良かった」朔夜さんの独り言が漏れる。 けれど私へと目を向けて朔夜さんは言った。
「まりあ、智樹さんに連絡いれておけ。
この雪じゃあ電車も止まってるし、車でも送っていけない。
今日は俺の家に泊まってけ」
朔夜さんにとっては何気なかった事だったのかもしれない。
けれどまた心臓がドクンと動いた。
さっき触れられたように、体中に熱が集まって行くのを感じる。
智樹さんは電話に出なかった。まだ仕事をしているのだろうか。 こんな大雪じゃあ家にも帰れないのかもしれない。
リビングの大きな窓の先、黒い空から降り注ぐ雪を見つめながら彼へとメッセージを残す。
「友人の家に泊まります」どうしても朔夜さんのマンションに泊まるとは言えなかった。 私に友人などいない事は智樹さんにはとっくにお見通しだったかもしれないけれど。
どちらにせよ、この大雪じゃああの館に帰る事は出来ない。



