「あなたには、関係ない…」
視線の中苛立ちを感じる。朔夜さんは身を屈めると私の顎を指で掴み、顔を自分の方へと向かせた。
眉間に皺を寄せ、低い声で凄むように呟いた。
「この世界には二種類の人間しかいない。
奪うか、奪われるか。 そしてお前の人生は誰かに何かを奪われっぱなしだ。
俺は、奪われてばかりの人間は馬鹿だと思う。軽蔑もする。情けないとも感じる。
人に蔑まれたくなかったら、強くなれ。自分の持っている物全て利用される側じゃなく、利用する側に回れ。
それが出来ないなら一生惨めな人生を勝手に送っておけ」
掴まれた顎を引き寄せると、まるでキスでもされてしまうのではないかと思う程彼の顔が近くなる。
吸い込まれそうなグリーンがかった瞳を前に、思わず呼吸を止めてしまう。 不意に緩んだ指、彼を押し退けるかのようにそれを拒絶した。
「止めてよッ!離して!」
「ちょっと朔夜~…酷い事言いすぎ~まりあ可哀想じゃんか。まだどうしてここに連れて来られたのかも分かっちゃいないのに」
ベッドから立ち上がり、悠人さんが両手で私の肩を掴む。
バッと悠人さんの腕を振り払うと、彼もまた苦笑した。 私の事をどれだけ調べようと、他人は他人。友好的に近寄って来たとしても、それは何か目的があるに違いはない。



