正直、後悔している。

 1年前、蓮見の記憶から俺たちを消したこと。



 蓮見が幸せになってくれると思ったのに。
 
 俺のことなんか忘れて、
 笑って生きてくれるかと思ったのに。



 まさか……


 これ以上、記憶が消えるかもしれない恐怖から、

 恋も、芝居も、諦めているなんて。




「マー君、いいでしょ?」



 春輝の猫なで声が耳に届き。

 異世界に飛んでいた俺の脳が、フッと体の中に戻ってきた。



「は?」



「僕たちのお部屋。はすみんに見せても」



「俺の部屋以外ならな」



 きつめに言葉をぶつけ、平常心を装ったけれど。

 俺の心の中は、バクバク状態。



 入んなよ。

 蓮見は俺の部屋に、絶対に入んな。



 だって。


 蓮見が俺の部屋に入った、既成事実の影が、

 部屋で一人になった俺に、間違いなく襲ってくる。



 そして、会いたくなる。絶対に。



 って、俺の返事も聞かず。

 蓮見は廊下に連れていかれているし。