『泣いちゃダメ! 泣いちゃダメ!』

 必死に脳に懇願。



 唯一、冷静であろうマトイと目が合い

 私の心が、グワンとうずいた。




 なに、この
 マトイの穏やかな微笑みは?

 本当に、私に向けたもの?




 信じられない光景に
 つい固まってしまった私。



 その時、優しさしか感じないマトイの声が
 私の耳に届いた。




「俺が、叶えてやるからな」



「え?」



「超満員の全国ツアー、
 俺が連れてってやるからな」



 う……

 だから、ヤバいんだって。



 いつも攻撃てきなマトイに
 そんな優しい言葉をかけられたら。


 涙……
 止まんなくなっちゃうんだって!!



 
 瞳に溜まっていく大粒の涙。


 誰にもバレないように、うつむいた時。



「璃湖ちゃん、事務所行こう。
 アミュレットのこれからについて、話したいし」



 副社長が、私をこの場から逃がしてくれた。



「あんたたち。次回までにダンスステップ
 マスターしてくるのよ!」



 私はなんとか鬼声を吐き捨てると

 顔が見られないように、出口まで走って行った。