「蓮見、お願い」
「え?」
「最後に……俺のわがままを聞いて……」
それって、
マトイとの思い出を消すってことだよね?
絶対にイヤ!!!
イヤ…… だけど……
拒むことなんてできない。
だって
涙を流すほど苦しんでいるマトイを
見続けるのが、辛いから。
私は、コクリと頷いた。
手のひらで涙をぬぐったマトイは、
私のおでこに、濡れた手のひらを当てた。
そして
涙を浮かべたまま私を見て、
苦しそうに笑った。
「俺が熱出した、小5の時からだからな」
へ?
「ずっと好きだったよ。蓮見のこと」
嘘……?
そんな長い間、
私のことを好きでいてくれたの?
「俺がいなくても……
幸せになれよ……」
マトイの声が
大好きなオルゴールのように優しくて
私は
大粒の涙をこぼすことしかできなかった。